今回私どもが表彰いただいた理由としては、
「専門知識の確かさもさることながら、
丁寧で誠実さを感じさせる接客は、
信頼できる。
顧客からの要望に応じた、
オーダーメイドによる
世界に一つだけの指輪を提供している。
家庭に眠っているアクセサリーを
リメイクする提案はすばらしい。
顧客からのお礼のメッセージが
壁に飾られ、
顧客とのつながりを大切にしている。
これらの点を評価いただいての表彰ということになったようです。
令和2年1月29日にリーガロイヤルホテル広島で表彰式がありました。
合わせて、広島商工会議所から発行された『いい店ひろしま』受賞店を訪ねてという地域振興推進事業の報告書に歴代受賞店の中から選ばれて取材を受けました。
以下、その報告書からの引用です。少し長いですが、お読みいただけると幸いです。
社長を務める、現在42歳になる倉迫貴一さんと前社長で貴一さんの父の正治さんには、忘れられない「風景」がある。それは貴一さんが中学生の時のことだ。
「ジュエリーKOUKI倉迫」で売り出しの手伝いをしていた時、忙しくしていた両親に代わり、あるお客の接客をすることになった。そのお客にはサファイアについての説明をした。すると、熱意が伝わったのか、そのお客は数十万円もするリングを買ってくれたという。「初めてのお使い」ならぬ「初めての商売」だった。
「中学校の時から学校の勉強はほどほどに、宝石の本を夢中になって読んでいました。そのお客様にも自分が得た宝石の知識を無邪気にご説明したのでしょうね。お買い上げいただいた時はとても嬉しく、深く印象に残っています。」
貴一さんはいずれ跡を継ぐ覚悟だったが、大学卒業後は5年半サラリーマンを経験した。その後「ジュエリーKOUKI倉迫」に戻ってきて、9年経った2014年7月、社長になった。まだ37歳の時だった。
「ジュエリーKOUKI倉迫」の前身は「倉迫時計店」。戦後間もない1946年、貴一さんの祖父定雄さんがバラック建ての店舗で開業し、当時は壊れた時計の修理を行っていた。宝石を扱いだしたのは、1960年代からだ。現在の有限会社コウキ倉迫に社名変更したのは1984年。2代目の正治さんがお客様と取引先と自分たちがすべてジュエリーのように「光り輝く」との意味を込めて「コウキ」とした。そして3代目の貴一さんが受け継ぎ、今年で創業74年を迎える。
「私が家業に戻った時には、大半の宝石は、商品をそのままの形で売っていました。オーダーメイドのものは全体のごくわずかでした。このオーダーメイドを主力にしようと思ったのは店に帰って1年が経ったころでした」
昔は商品を展示していると「これ素敵ね」と購入されるケースが多かった。だが次第に、「こういうのはないの?」「こういうのは作れないの?」と尋ねられることが増えてきた。
当初はメーカーに「こういうデザインで、これくらいの予算で」と声をかけて取り寄せていたが、2007年ころからオーダーメイド商品に本格的に移行していった。
オーダーメイドには、セミオーダーとフルオーダーの2つがある。セミオーダーの場合は、店頭のデザインサンプルの中から自分の好みのものを選んでもらう。フルオーダー場合はお客の要望を聞きながら、一から作っていく。
「フルオーダーの場合、お客様からのご要望をお聞きするとともに、様々なサンプルをご試着いただき、こういう感じがいいとかこういう感じは好きじゃないというように、お好みのデザインを明確にしていきます。」
リングの形は好みがある。ライン一つとってもストレートライン、V字ライン、S字ラインなどだ。デザインによってカーブがきついこともある。もう少し太いほうがいい、細いほうがいいという要望や、ダイヤを入れるか入れないか、入れるとしたらどんな種類のダイヤにするか、何個入れるか。素材にもプラチナや18金、ピンクゴールドなど。まさに多種多様である。
「私どもの強みは、お客様のご要望に合わせて指輪などのジュエリーをお作りできるところだと思います。オーダーいただいてすぐ完成ではなく、製作途中でいったんお客様にご確認していただきます。そこで修正もかけられるので、よりお客様の思い描いたイメージ通りのものにすることができます。私どもでは打ち合わせからはじまり、途中でのご確認、そしてご納品と何度かご来店いただきます。そのため『出来上がるまでの過程も良い思い出になった』『より愛着が湧いた』と多くのお客様が言ってくださいます。」
婚約指輪はプロポーズをするときに贈るもので、結婚指輪は結婚している証として着ける意味合いがある。婚約指輪は、給料の1か月分くらいのものを購入する人が多く、およそ2組に1組が購入。結婚指輪は95%くらいが購入している。
「セットリングといって、婚約指輪と結婚指輪を重ねて着けられるデザインをお選びになる方が多いですね。普段は結婚指輪だけを着けて、お出かけの時には婚約指輪を重ね着けできます。二つをセットで着けた時にぴったりと合わさるので、より魅力が増します。私どもでは結婚指輪をオーダーメイドでお作りしているので、どんな婚約指輪にもぴったりと合う結婚指輪をお作りできます。」
お客のこだわりが、年々強くなっている。昔は、男性は指輪に興味がないケースが多かったが、今は男性も「僕はこういうのがいい」とはっきりと主張する。女性と男性の希望するデザインの共通点を見つけて双方の納得できるデザインを提案することもある。
最近目立つのが、宝石のリフォーム、リペアである。バブルのころに一番宝石を買った人たちが、80代、90代を迎えている。元気なうちに、娘や孫に分けてあげたいという要望も多い。80代の女性がスマートフォンで当店のことを調べてご来店になることもあるという。また家族が遺品を整理していたら、当時買ったものが出てきたと来店するお客もいる。「おばあちゃんが使っていたものだから、活かしたいけれど、デザイン的に30年も前のものだと使いにくい」というのだ。また、せっかくのリングだが、壊れている場合もあるという。
「ほとんどの宝石は、経年劣化が少なく、普遍性があります。ただ、数十年も経つとデザイン的に古くなったり、ネックレスなどの金属部分が破損したりします。そういったジュエリーをまた使っていただけるように、使いやすいおしゃれなデザインに作り替えたり、修理したりします。そうすると文字通り生まれ変わるのです。おばあさまやお母さまから受け継いだジュエリーをリフォームして愛用されている方も多くいらっしゃいます。」
例えばリフォームの場合、30年以上前に流行した立爪や桔梗爪といったデザインがある。現代の感覚では、大げさで引っ掛かる、あまり良いデザインとは言いにくい。これらを普段使い出来るリングやネックレスにしたり、ご子息の婚約指輪にリフォームすることも可能である。
「ご主人に先立たれ、ご主人の指輪がずっと遊んでいたり、ご自身の指輪はサイズが合わなくなって使えないという場合には、二つを溶かして、新しく自分用の指輪に作り替えることもできます」
リフォーム・リペアの相談は年々増加しているという。
結婚した後、親戚や友人に結婚報告のために送られるはがき。このはがきが、指輪を作ってもらったお礼にと、送られてくることも多い。店内に飾られたはがきの写真は、新郎新婦の笑顔でいっぱいである。飾り切れなくなったはがきは、ファイリングして大切に保管している。またホームページにも今までに製作した婚約指輪や結婚指輪がカップルの笑顔の写真とともに200組以上掲載されている。
「先日、とても嬉しいことがありました。以前、結婚指輪を製作させていただいたご夫婦が別件でご来店くださった時のことです。帰り際、となりの席にいらっしゃったカップル様に『このお店はすごくいい店ですよ!』と声をかけてくださったのです。そのお声がけが本当に嬉しい気持ちになりました。」
宝石業界の最盛期は1990年前後のバブル期。貴一さんが戻ってきた2005年当時、市場は最盛期の半分以下になっており、宝石をネット販売する店が出始めていたころだった。インターネット販売に力を入れようと、翌年の2006年にホームページを作った。
「当初、既製品をインターネット販売していたのですが、残念ながら大手には太刀打ちできませんでした。ただ、ホームページをご覧になったお客様から『この商品が見たい』『結婚指輪をオーダーで作りたい』『リフォームの相談ができますか』というお問い合わせやご来店が徐々に増えていきました。数年後には思い切ってインターネット販売はやめて、オーダーメイドやリフォームでお一人お一人のご要望に沿ったジュエリーをご提供するカタチにしました。」
「ネットで売っているけれど、実物を見たい」「オーダーメイドの相談がしたい」というお客が予想以上に多かった。ホームページを見て来店するお客も年々増えた。最近では年間、1000件を超える注文や相談を受けているという。
[倉迫 貴一さん]
1977年生まれ。広島工業大学附属広島高校(現・広島なぎさ高校)、名城大学を卒業。
5年半、クレジット会社勤務を経て、「ジュエリー KOUKI倉迫」に戻る。2014年に社長に就任。平成31年度「いい店ひろしま」受賞。
[ジュエリー KOUKI倉迫]
■住所中区十日市町1-3-38
■TEL082-231-4951
■営業時間10:00〜18:00
■定休日木曜日
■HPhttps://www.kouki-kurasako.com/
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